<この記事でわかること>
「NPOは給料が安い」——このイメージは、半分は当たっていて、半分は古くなっています。
平均で見れば、NPOの給与水準は民間企業より低いのが実情です。ただし、その平均には年間予算300万円の小さな団体も、数億円規模の認定NPO法人も、同じように含まれています。「NPOの平均」で自分の年収を見積もると、判断を誤ります。
この記事では、当社が実際にご支援してきた実績に基づく役職別の年収目安と、内閣府などの公的調査データの両方から、NPOの給料の実態を整理します。そのうえで、給与水準が高い団体に共通する条件と、「思っていたより低い」と感じた場合の選択肢までをご紹介します。
まず結論から、当社がこれまでNPO・非営利組織への転職をご支援してきた実績に基づく、役職別の年収目安をお示しします。
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| 役職・階層 | 年収の目安 | 想定される人材像 |
|---|---|---|
| 若手 | 200万円台 | 第二新卒〜30歳前後。経験不問で意欲を重視する採用が中心 |
| メンバー | 300万円台 | 実務を一人で回せるレベル。事業担当としての採用 |
| リーダー | 500〜600万円台 | プロジェクトマネジメント経験者。チームや事業の責任者 |
| 一部の団体 | 800万円程度 | 事業規模の大きい団体の幹部・専門職ポジション |
※ 2026年時点の当社支援実績に基づく目安です。団体の事業規模・財源構成・地域・ポジションによって幅がありますので、比較の出発点としてご覧ください。より詳しい水準は個別にご案内しています。
この表を見て、幅の広さに驚かれたかもしれません。若手の200万円台と、一部団体の800万円では4倍近い開きがあります。
これはNPOという枠組みが、事業規模のまったく異なる組織を同じ名前で括っているからです。年間予算が数百万円で、代表を含めて数名という団体もあれば、数億円規模の事業を数十名の有給スタッフで運営している認定NPO法人もあります。両者を平均すれば、どちらの実態も表さない数字が出てくるだけです。
したがって、NPOへの転職を検討するときに見るべきは平均値ではありません。「どの規模の、どういう財源構造の団体か」です。この点は第5章で詳しく扱います。
次に、公的な調査データから全体の傾向を確認します。ここで押さえておきたいのは、水準そのものより「どちらの方向に動いているか」です。
東京都が実施した「第4回 NPO法人と人材のマッチングに関する調査」によると、2015年の常勤職員の平均給与額と比較して、給与水準は明確に増加傾向を示しています。
低い層が減り、中間から上の層が増えている。分布そのものが上方向にシフトしていることが読み取れます。ただし民間企業の給与水準と比べれば、現時点では依然として低い状態にあることも事実です。
内閣府「2023年度(令和5年度)特定非営利活動法人に関する実態調査」によると、NPOに転職してきた職員の前職は次のような構成になっています。
注目すべきは、最も多いのが一般企業からの転職者だという点です。同調査では、採用時に重視される要素として「マーケティング、IT、営業、会計などの専門知識」や「プロジェクトマネジメント経験」が挙げられており、企業での実務経験が求められていることがわかります。
給与水準が上がっている背景には、こうした専門人材を確保する必要が生じてきたという構造的な理由があります。想いだけで人が集まる時代から、待遇を用意して専門性を迎える段階へと、業界全体が移りつつあるということです。
統計上の平均からは見えにくいのですが、非営利組織のなかにも高い報酬水準のポジションは存在します。当社が実際に扱ってきた求人から、2つの例をご紹介します。
CASE 1
著名な公益財団法人|年収上限1200万円
法人事業統括、海外連携担当、プログラム企画責任者といったポジションの募集です。財団の事業全体を動かす立場であり、求められる要件も相応に高くなります。
ここで重要なのは、組織の「非営利性」と報酬水準は必ずしも連動しないということです。安定した財源を持ち、事業規模が大きい組織であれば、民間企業と遜色ない報酬を提示することは十分に可能になります。
CASE 2
大手NPO|管理部門長候補 700〜800万円
民間企業で経理や人事の経験を積み、マネジメント経験のある方を求めるポジションです。事業が拡大するほど、それを支えるコーポレート機能の必要性が増していきます。
「現場の支援に直接関わらないと社会貢献にならない」ということはありません。組織の土台を整えることは、活動の持続性に直結します。そしてこの領域こそ、民間企業出身者の経験が最も素直に活きる場所でもあります。
※ 上記は当社がご紹介してきた求人の例です。募集状況は時期により変動しますので、最新の求人状況は個別にお問い合わせください。
ここまで上昇傾向と高報酬の事例を見てきましたが、それでも全体として給与水準が低いのは事実です。その理由は、NPOの収入構造そのものにあります。
内閣府の2023年度実態調査によると、NPOの収入構造は次のようになっています。
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| 収入源 | 割合 | 人件費への影響 |
|---|---|---|
| 会費収入 | 23.7% | 会員数に依存し、大きく伸ばしにくい |
| 行政からの委託・ 指定管理者業務 |
20.0% | 単価が固定されており、人件費の上乗せが難しい |
| 行政からの 助成金・補助金 |
19.1% | 単年度が中心。継続の保証がなく、固定給を上げにくい |
| 利用者からの 料金収入 |
14.5% | 事業収益として蓄積でき、待遇改善につながりやすい |
ここに構造的な問題があります。収入の約4割が行政からの委託・助成に由来しており、その多くは単年度で区切られています。来年度も同じ額が入ってくる保証がない状態では、職員の給与を引き上げる判断は簡単にはできません。
つまり、給料が低い理由は「NPOだから」ではなく、「収益を自ら生み出し、翌年以降も継続できる構造になっていないから」です。この見方ができると、転職先を選ぶときに何を確認すべきかも見えてきます。
一方で、資金調達の手法は広がりを見せています。事業収益の確保、企業との連携、クラウドファンディング、さらには遺贈寄付といった新しい形の寄付も増加傾向にあります。
会費と行政資金に依存する構造から、複数の財源を組み合わせる構造へ。この移行を進められている団体が、待遇改善を実現できている団体でもあります。
ここまでの内容を踏まえ、求人票を見るときに確認すべき3つの条件に整理します。この3つが揃っている団体は、給与水準が相対的に高い傾向にあります。
内閣府の2023年度実態調査によると、事業規模1,000万円以上の法人は41.7%に達し、5,000万円以上の大規模法人も増加傾向にあります。
規模が大きいほど、人件費に回せる原資が確保しやすくなります。団体の事業規模は、多くの場合ウェブサイトの活動報告書や決算報告で確認できます。応募前に必ず目を通してください。ここを見ずに応募すると、面接で提示される条件に驚くことになります。
同調査では、事業規模5,000万円以上の団体では74.5%が職員中心の運営体制へ移行していることが示されています。
ボランティア中心の運営と、有給職員中心の運営では、組織としての性格が大きく異なります。職員中心に移行している団体は、専門人材を継続的に雇用する前提で財務を組んでいるということです。求人票に常勤・正職員のポジションが複数並んでいるかどうかは、ひとつの目安になります。
第4章で見たとおり、行政からの単年度資金に依存する構造では、給与の引き上げ判断が難しくなります。逆に、事業収益や継続寄付といった自団体でコントロールできる財源の比率が高い団体ほど、待遇を上げる意思決定がしやすい。
面接では、遠慮せずに「収入構成の内訳」と「その推移」を聞いてください。答えられない、あるいは答えたがらない団体は、その時点で判断材料になります。
年収は重要ですが、収入を構成する要素は給与だけではありません。NPOでは、柔軟な制度設計によって給与面を補完する動きも進んでいます。
内閣府の2023年度実態調査によると、41.0%の団体が副業・兼業を認めており、31.0%がフレックスタイム制度を導入しています。
これは実質的な意味を持ちます。本業の給与が民間企業より低くても、副業と組み合わせることで生活水準を維持できる可能性があるということです。民間企業では副業が制限されているケースも多く、「副業可であること」を年収の一部として計算に入れる視点は持っておいてよいと思います。
同調査では、採用時に重視される要素として次のような結果が出ています。
特筆すべきは、学歴が2.8%、年齢が9.9%と、いずれもほとんど重視されていない点です。実践的なスキルと組織への適性で判断する採用傾向がはっきり表れています。年齢を理由に転職を諦める必要はありません。
もうひとつ考慮に入れたいのが、経験の可搬性です。限られた資源で事業を設計し、行政・企業・地域住民という利害の異なる関係者を調整しながら成果を出す。この経験は、その後どのセクターに移っても価値を持ちます。
目先の年収差だけでなく、数年後に自分がどんな仕事を任される人材になっているかまで含めて考えると、判断の材料が変わってくるはずです。
ここまで読んで、「やはり現在の年収からは下げられない」と感じた方もいらっしゃると思います。その感覚は正当なものです。生活設計が成り立たない転職は、どれほど志が高くても続きません。
ただし、ここで検討を終わりにする必要はありません。社会課題の解決に関わる道は、NPOだけではないからです。
特に4つめの副業は、NPOの41.0%が副業・兼業を認めているという事実と組み合わせると、双方向で成立します。本業を続けながらNPOに関わり、実際の相性を確かめたうえで判断する。この順番であれば、リスクを大きく抑えられます。
最後に、年収以外の視点についてお伝えします。ここを飛ばすと、条件面で納得して入ったのに続かない、という結果になりがちだからです。
年収と役職だけで転職先を選ぶと、後悔します。組織文化、経営の質、そして自分自身の想いまで見極めて初めて、長く力を発揮できる場所が見つかります。
当社は、この考えに基づいて「三次元マッチング」という手法でご支援しています。年収という一次元の条件ではなく、3つの軸から適合性を確認する方法です。土台にあるのは、人は大人になってからも段階的に成長・発達し続けるという考え方(成人発達理論)です。
軸1:スキル・経験の適合
軸2:本人の想い・価値観の適合
軸3:組織文化・制度・経営の質の適合
小規模な団体では、一人で幅広い業務を担うことになり、どの仕事も中途半端になってしまうケースがあります。また社内に専門知識を持つ先輩が少なく、成長を実感しにくいという声も実際に聞きます。裁量の大きさは魅力ですが、指導や学習の機会が設計されていなければ、数年後のキャリアに不安が残ります。軸3はこの点を確認するためのものです。
これらを応募者の立場で率直に聞き切るのは、簡単ではありません。だからこそ、団体の内側を理解したうえで提案できるエージェントを介する価値があります。
なぜNPOの給料は低いのですか?
収入構造に理由があります。内閣府の2023年度実態調査によると、NPOの収入は会費が23.7%、行政からの委託・指定管理が20.0%、行政からの助成金・補助金が19.1%を占めています。行政からの資金は単年度で区切られることが多く、翌年度の継続が保証されない状態では固定給を引き上げる判断が難しくなります。逆に言えば、事業収益や継続寄付といった自主財源の比率が高い団体では、給与水準も相対的に高くなる傾向があります。
NPOの給料で生活していけますか?
役職と団体の規模によります。当社の支援実績では、若手200万円台、メンバー300万円台、リーダー500〜600万円台が目安です(2026年時点)。単身であればメンバークラスから成り立ちますが、扶養家族がいる場合は慎重な検討が必要です。なお41.0%の団体が副業・兼業を認めているため、複数の収入源を組み合わせる方も実際にいらっしゃいます。まずは生活に必要な最低額を数字で決めてから、選択肢を絞ることをおすすめします。
NPOに賞与や退職金はありますか?
団体によって大きく異なり、一律には言えません。事業規模が大きく職員中心の運営体制に移行している団体では、民間企業に近い制度を整えているケースがあります。一方、小規模な団体では賞与が業績連動、あるいは支給実績がないこともあります。求人票の記載だけでは判断できないため、面接の場で過去数年の実際の支給実績を確認してください。制度の有無ではなく運用実績を聞くことが重要です。
未経験でもNPOに転職できますか?
できます。内閣府の2023年度実態調査では、NPOへ転職した職員の前職として会社員が31.3%と最多で、約3割が一般企業からの転職者です。採用で重視されるのは意欲や熱意(48.5%)、専門知識や経験(46.4%)であり、学歴は2.8%、年齢は9.9%とほとんど見られていません。特にマーケティング、IT、営業、会計といった専門性や、プロジェクトマネジメント経験が評価されます。
年収を下げずにNPOや社会貢献の仕事に関わる方法はありますか?
4つのルートがあります。①大手企業のサステナビリティ・CSR部門への転職、②社会性を掲げるコンサルティングファーム、③資金調達済みのソーシャルベンチャー、④本業を維持したまま副業・プロボノでNPOに関わる方法です。特に④は、収入を維持しながら実際の相性を確認できるため、転職判断の前段階として有効です。NPOの41.0%が副業・兼業を認めている点も追い風になります。
NPOの給料は今後上がっていきますか?
全体としては上昇の方向にあります。東京都の調査では、月25〜30万円未満の層が22.2%から24.8%へ、30〜40万円未満が8.3%から12.3%へと増加しており、分布が上方向にシフトしています。背景には、事業規模の拡大と、専門人材を有給で確保する必要性の高まりがあります。ただしこれは業界全体の平均的な傾向であり、個々の団体では財源構造によって差が開いていく可能性もあります。団体単位で見極めることが重要です。
「NPOは給料が安い」というイメージは、平均値としては当たっています。しかし、その平均は年間予算数百万円の団体と数億円規模の団体を同じ枠に入れた結果であり、個別の団体を判断する材料にはなりません。
この記事の要点を整理します。
数字を知ることは出発点にすぎません。その次に必要なのは、「自分の場合はどうか」を具体的に検討することです。ご自身の経験と希望する水準が、どの規模のどんな団体と噛み合うのか。ここは一般論では答えが出ません。