「社会問題を解決する仕事」「社会貢献性が高い仕事」と聞くとNPOを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、NPO以外にも社会問題の解決を仕事にできる様々な選択肢があります。
この記事では、社会問題を解決する仕事にどのような選択肢があるのか?について、年収・やりがい・成長機会などの観点から整理し、それぞれがどのような人に向いているのか?について解説していきます。
一般的には、社会問題を解決する仕事として捉えられている選択肢としては、大きく以下の組織タイプに分類できます。
同じ組織タイプでも事情は様々ですが、社会貢献度や給与水準、成長機会や安定性についてはある程度共通点があるので、それらについて比較・解説します。
NPO/NGOなど非営利組織
NPO/NGOなどの非営利組織は、「損得勘定ではなく、目の前の困っている人を助けたい」「現場感を持って社会課題に向き合いたい」という想いが強い方に向いています。
特に「ロマンと算盤」でいえば「ロマン」を重視できる方との相性が良いでしょう。一方で、年収を下げられない方や、ビジネス化が容易な領域での活動を望む方には向いていない可能性があります。
求められる人材としては、第二新卒~30歳前後の若手層(経験不問・やる気と熱意重視)、プロマネ経験・実務経験のあるリーダー層、ベンチャー・外資やコンサル経験を持つボードメンバーなど、様々なレベルの人材を必要としています。
年収は若手で200万円台、メンバーで300万円台、リーダーで500-600万円台が一般的です。ただし、最近では年収800万円程度を用意する団体も出てきており、待遇面での改善が進んでいます。
公務員(国際公務員、国家公務員、地方公務員)
公務員は、「国を良くする」「地域を良くする」ことを実感したい方に向いています。国民生活の在り方や、地域の未来に向けた活性化策など、企業や市民も巻き込んだ企画から関われる機会にやりがいを感じられる方との相性が良いでしょう。また、急激な経営不振など外的な変化は多くないので、腰を据えて仕事をしたい方にも向いています。
一方で、「お役所仕事」を好む同僚や上司が多く、成長を感じにくかったりフラストレーションがたまりがちな面もあります。そのような環境も受け止めたうえで、公的機関だからこそのリソースでダイナミックに活動している方も多くいます。組織の力学やルールも理解した上で立ち回れる人材が求められます。
求められる人材や年収レンジは、地方公務員、国家公務員、国際公務員など採用形態によって大きく異なります。
大手企業(新規事業開発・CSR等)
大手企業のCSRや新規事業開発部門は、企業のリソースを活かした社会貢献に魅力を感じる方や、一定水準以上の待遇を維持したい方、組織の中で変革を起こしていきたい方に向いています。
ただし、短期的な経済性重視の判断に違和感を持つ方や、社内調整や根回しに苦手意識がある方には向いていないかもしれません。
求められる人材は、新規事業開発ならコンサルティング経験やスタートアップ経験者、CSR部門では英語力・ファイナンス知識・IR経験者などです。
年収は若手スタッフで400-600万円、ミドルで600-800万円、マネージャー以上で750-1300万円程度です。外資系CSRでは800-1300万円の水準となっています。
コンサルティング企業
最近は社会性を重視するコンサルファームが増えてきています(総合系、イノベーション支援系、SDGsコンサル系など)。一社にコミットするのではなく、色々な会社を見てみたい方向けの選択肢といえます。
また、ビジネスで必要な戦略性・論理性を身につけたい方にもおすすめです。ソーシャルな仕事をしたいが、年収をそこまで落とせない方にとっても良い選択肢となります。
求められる人材としては以下のような方が向いています:
事業会社にて企画業務に関わってきた人材コンサルファーム経験者(より思いをもって仕事をしたい方)社会への想いがある方(面接で聞かれます)
※ exコンサルタントとしてのキャリアは事業会社・スタートアップの経営企画・事業企画・事業開発などにつながることも。
年収レンジは総合系コンサルティングファームと同等レベル・または準ずるレベルとなっています。
ソーシャルベンチャー
ソーシャルベンチャーは、「ロマン」も「算盤」も大事にしたい方、スピーディーな実行と変化を好む方、新しい価値創造に挑戦したい方に向いています。一方で、安定性を重視する方や年収の大幅なダウンが難しい方には向いていないかもしれません。
求められる人材としては、実務経験2年以上で一人立ちできるレベルの方、コンサル経験者、地頭×行動力のある方、ビジネス領域で著しい成果を出してきた方などが挙げられます。
年収はマネージャークラスで800-1000万円、上限は1200万円程度です。また、ストックオプションで家を買った・留学したという事例も出てきています。
ローカル企業(地域密着型企業)
ローカル企業は、地域とのつながりを感じられる仕事をしたい方、家族的な組織の良さを理解できる方、チームワークを重視する方に向いています。都心部の給与水準を期待する方や、急激な変化や成長を求める方には向いていないかもしれません。
求められる人材は、マネジメント経験または志向性のある方、自分と異なる考え方の人へ敬意を持って接する方、チームワークが好きな方(調和型)、新しい変革にチャレンジしたい方です。
年収はスタッフで400万円、マネージャーで600-700万円、役員で800万円程度となっています。
このように、社会貢献の仕事といっても、組織によって求められる人材像や待遇は大きく異なります。また、近年はNPOの待遇改善やソーシャルベンチャーでの資産形成機会など、従来のイメージとは異なる変化も見られます。自身の価値観や希望する働き方、キャリアプランに合わせて、最適な選択肢を見つけることが重要です。
ここからは、社会問題を解決する仕事への転職を実現した事例について具体的に見ていきましょう。
IT企業への転職事例:イベント企業から社会課題解決の最前線へ
30代の女性Aさんは、イベント企業から社会課題解決型のIT企業へ転職しました。「アイデアがどんどん実現して、今の仕事が天職だと思います。自分が関心のある社会課題を取り扱うので、世の中を変えているという実感を持てるのが嬉しい」と語ります。
会社の成長とともに自身のキャリアも発展し、IPO(株式公開)を実現。ストックオプションによって家の購入も叶えたといいます。社会貢献と経済的リターンの両立を実現できた好例といえるでしょう。
ローカル企業への転職事例:組織変革を通じた地域貢献の実現
30代の男性Bさんは、地域に根ざしたローカル運輸会社に転職。「会社としては古い体質がありながらも、それを変えていこうというトップの想いが強く、その変化を求められているという環境で楽しく働かせてもらえています」と話します。
現在は150名を超える部門のトップというポジションを任されており、「組織の変革をリードする立場で、地域に貢献できることにやりがいを感じています」と語ってくれました。
一方で、社会貢献性の高い仕事と言われるような仕事に転職したものの、仕事に充実感を感じられなかった人たちもいます。今回はいくつかのケースをご紹介します。
大手企業での失敗事例:表面的な社会貢献に終わるケース
「社会課題解決」を掲げる大手企業に転職したAさんは、理想と現実のギャップに苦しむことになりました。
「対外的には『社会課題に取り組む良い会社』としてアピールしているのですが、実態は違いました。社内では経営陣同士が足を引っ張り合ってギスギスした雰囲気があり、本来の目的である社会貢献が二の次になっています」
結果として、社会貢献は自己顕示欱やマーケティングのツールでしかないという現実に直面。「もっと心から事業に取り組める環境で働きたい」と、再度の転職を検討することになりました。
小規模組織での失敗事例:リソース不足による成長機会の欠如
一方、スタートアップやNPOなど小規模組織に転職したBさんは、別の課題に直面します。
「小規模組織ならではの課題が想像以上に大きかったです。限られた人数で事業を運営しているため、一人で幅広い業務をこなさなければならず、どの業務も中途半端になりがちです。また、社内に専門知識を持った先輩社員が少ないため、自分の成長を実感できる機会も限られています」
このように、納得のいく仕事を選ぶには、いくつかの重要なポイントを抑えておく必要があります。
社会貢献性の高い仕事を選ぶ際、表面的な企業の取り組みだけでなく、より深い視点での見極めが重要です。具体的には以下の4つの観点からの確認が必要です:
組織との3次元での適合性
組織の本気度
単にマーケティングや対外的なアピールのためではなく、本当に社会課題の解決に取り組む覚悟があるか。経営陣の想いや、実際の事業における優先順位などを確認することが重要です。
成長機会の有無
社会性と自身のキャリア形成を両立できる環境かどうか。特に小規模組織の場合、幅広い業務への対応が求められる一方で、適切な指導や成長機会が得られない可能性もあります。
経済性とのバランス
社会性を追求しながらも、持続可能なビジネスモデルが確立されているか。また、自身の生活設計との両立が可能な待遇であるかの確認も必要です。
これらの要素を総合的に判断することは、求職者個人では難しい場合も多くあります。特に、表面的な情報だけでは分からない組織の本質や、実際の働き方などは、面接だけでは見極めることが困難です。
そのため、社会貢献性の高い仕事への転職を考える際は、この分野に精通したキャリアアドバイザーに相談することをお勧めします。経験豊富なアドバイザーは、企業の表面的な情報だけでなく、組織文化や実際の働き方、さらには転職後のキャリアパスまでを見据えたアドバイスを提供することができます。
また、アドバイザーを選ぶ際も、単なる求人紹介ではなく、あなたの価値観や目指すキャリアを深く理解し、共に最適な選択肢を探してくれるパートナーを見つけることが重要です。表面的なマッチングではなく、「ビジョン」「スキル・経験」「世界観」の3つの軸での適合性を重視するアドバイザーとの出会いが、成功への大きな一歩となるでしょう。
慶應義塾大学卒業後、メーカーでの海外営業を経て人材エージェントへ転職。人材紹介経験20年以上、国内外で社内トップの成績を連続して達成。コンサルティング業界やMBAホルダーに特化した紹介会社では外資系戦略コンサルティングファームや世界的IT企業、ベンチャー企業などへ若手からエグゼクティブレベルの人材を紹介。未経験・社内最年少ながら月間売上社内トップの成績を連続して達成する。
その後大手人材紹介会社、JACリクルートメントのタイ法人へ入社。執行役員として現地でスタートアップの段階から日系売上高第一位まで規模を拡大する事に貢献。述べ200名以上の海外就職、海外から日本への帰国の転職のサポートを行う。常に社内トップの成績を残す。2012年に日本へ帰国、プロビティ・グローバルサーチ株式会社を設立。若手優秀人材から年収数億円の世界的エグゼクティブなどヘッドハンティング・採用支援実績多数。
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